はじめに

 青年会議所で得られるものはなんでしょうか。私は、入会してからの 6 年間で数多くありましたが、そのなかでも自信を持って答えられるのが「可能性」を引き出してくれる人との出会いです。ある時、LOMの先輩から私の可能性ついて、これだと断言されたことがあります。それと同時にその先輩は、人や場所、本などを紹介してくださいました。私は、その可能性について半信半疑でしたが、先輩に導かれるように行動しました。その結果、私は、今まで見たことのない素晴らしい景色を見ることができたのです。これは、青年会議所が青年を育てる場であること、このことが腑に落ちる出来事だったと当時を振り返り感じています。
今、私たちを取り巻く環境はとても厳しいものです。米沢青年会議所においては、会員数の減少が著しく、運動の縮小を危惧しています。また、私たちが活動するエリアにおいては、人口減少や少子高齢化が加速し、この課題がさまざまな形で顕在化し、住民の危機感が高まっています。この厳しい状況を乗り越えるために私は今、私自身の青年会議所での経験を振り返り、可能性に着目することがより一層重要になっていると考えています。可能性は、まるで氷山のように表に出ている部分が少なく、大半は潜んでいるものです。この潜んでいる力を使うことで、この厳しい状況を乗り越えるのではないかというのが私の考えです。潜んでいる力は「ポテンシャル」と呼ばれてますが、私がこのポテンシャルに期待していることは、単に大きさだけではなく、思いもよらない力にあります。私は、この思いもよらない力が個性であり、新たな価値を創造することにつながると考えます。ただ、私が先輩から気づかされたように、自身の可能性に気づくことはなかなか難しく、他者の力が重要です。すなわち、多くの人と出会い、多くの人と関わり、自身を知ってもらう必要があるということです。
私たちは、青年会議所に留まらず、組織の垣根を越えた多くの人と出会い、メンバー一人一人の可能性を引き出すことで、明るい豊かな社会へとつなげていきます。

 

心地よさとまちづくり 

 まちづくりにとってなにが必要か、という話になった時に私がまず考えるのがそこに住む人と訪れる人の視点です。これを前提とすると、まちに必要なものとして私は「心地よさ」という一つの考えを持っています。心地よさとは、誰でもどの場所においても当てはまるものではないでしょうか。住む人が心地よく、訪れる人も心地よい。私は、そんなまちを想像しています。
米沢川西は、特色のある食、歴史、文化、自然といった地域資源があるまちです。この地域資源は地域固有のもので、地域資源を活かすことはまちの個性になると考えます。地域資源を活かすために、まずは、地域資源の特色をしっかりと理解すること、特色を見極める目を養うことが重要です。そして、米沢川西には連綿と受け継がれてきた文化があります。この文化は、年々の積み重ねによって厚みが増しています。さらに、米沢川西には、まちを良くしたいと行動する多くの人がいます。私たちは、まちを想い行動する多くの人と連携し、特色のある地域資源と、連綿と受け継がれてきた文化を活かし、米沢川西の可能性を引き出していきます。

 

原風景とひとづくり

 少子高齢化や人口減少の進行とともに、グローバル化やデジタル化の進展によって社会全体が急速に変化しています。このような著しい社会変化があるなかで、社会で求められる資質や能力も変化しています。変化はいつの時代にでもあるもので、避けて通ることはできませんし、すべての変化に対応するのは難しいことです。重要なのは、その変化を受けて今何をすべきか考えられる判断力だと考えます。幼少期において、広く人間形成に影響を与えるとされているのが「原風景」です。原風景とは、辞書によれば、心に残る懐かしい風景であって、ほとんどが幼少期に形成されるとされています。私たちの活動は、子供たちの原風景となり得ます。私たちは、このことを認識し、責任を持って子供たちと向き合い、子供たちの可能性を引き出していきます。
私たちは、社会により良い変化をもたらすために活動する青年の集まりです。そして、私たち青年は、20 年 30 年後の社会に影響を与える重要な役割を担う世代として、責任世代と呼ばれています。私たちは、この役割を認識し、社会により良い変化をもたらすために、多くの青年と出会い、他者と自身の可能性を引き出していきます。

 

日常とミナミハラアートウォーク

 ミナミハラアートウォークは、南原の自然、文化、歴史といった地域資源を後世に残したい、という想いでスタートした地域活性化事業です。では、南原の地域資源を後世に残すためには、何が必要でしょうか。私は、南原の「日常を知る」ことではないかと考えます。それは、地域に住む人も訪れる人にとっても同じです。自身の生活を振り返ってみると、気づかずに見過ごしている地域資源がとても多いと感じます。この地域資源は、視点を変えれば魅力になるものが日常に多くあるのではないでしょうか。この南原の魅力に気づかせてくれるのが、芸術であり、ミナミハラアートウォークなのです。
ミナミハラアートウォークの舞台は、住居と自然が共存する地域で、多くの住民が暮らしています。この地域でこれまで 3 年間この事業を続けてこられたのは、住民の皆様の理解があってのことです。しかし、この事業を理解する以前に、この事業を知っている人が限られるのも現状です。今後もミナミハラアートウォークを継続していくなかで、この事業を形骸化させず、地域に浸透したものにするには、まずは、住民の皆様にこの事業を知っていただき、住民の皆様との関係をより強くしていく必要があると考えます。
4年目のミナミハラアートウォークは、地域の日常に目を向けるとともに、住民の皆様との関係をより強いものにすることで、南原の可能性を引き出していきます。

 

成長の機会と会員拡大 

 米沢青年会議所では、卒業者数が入会者数を上回る状況が続き、会員数の減少が進んでいます。このような状況のなか、今年の会員数は、発足以来 64 年の中で発足当初の 5 年間を除いて最小です。私たちは、この事実を真摯に受け止め、会員拡大がなぜ必要か、今一度根本を考える必要があります。
では、そもそも会員拡大はなぜ必要なのでしょうか。会員拡大の根本はなんでしょうか。それは、青年会議所の使命にあると思います。青年会議所の使命は「青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供すること」です。私が青年会議所で経験した可能性を引き出してくれる人との出会いは、この使命に通ずるものだと考えます。青年会議所には、多くの出会いがあり、その出会いが可能性を引き出すきっかけとなります。青年会議所の使命が果たされることがなくなることは、このまちにとって大きなダメージとなることは、言うまでもない事実ではないでしょうか。この考えをもとに、私たちは一人でも多くの青年と出会い、青年一人一人が持つ可能性を引き出していきます。

 

利他の精神と組織運営

 青年会議所は、自己の利益よりも他者の利益を優先にする「利他の精神」のもと活動する組織です。私たちは、このことを認識し、この精神をあらゆる場面での判断や行動の指針としていかなければなりません。公益社団法人としての法令順守はもちろん、組織の一定の情報を開示し、透明性をもった運営をすることも私たちのこの精神につながるものだと考えます。
また、私たちの事業は、私たちが他者を想い、考えに考え抜いた努力の積み重ねで、自信を持って外に発信できるものです。そして、参加していただくことが大前提です。多種多様な媒体を使い、あらゆる世代の目に留まる工夫をすることで、米沢青年会議所の可能性を引き出していきます。

 

結びに

 大人になるにつれて、周囲で現実を選択する場面を目にすることが多くなったと感じています。青年会議所は「新たな価値の創造」をスローガンに掲げる組織です。新たな価値は、現実の選択だけでは生み出されないのではないでしょうか。私は、現実だけではなく、理想の選択をすることが、新たな価値を創造することにつながるのだと思います。そして、この創造された価値は、時に「思いもよらない結果を生み出す」ことになるのではないかと思います。これが変革ではないでしょうか。私たちが置かれている現状を考えると、価値の創造であり変革が必要だと考えます。そのために、2024 年度は米沢青年会議所の先頭に立ち、理想を見据え舵を切っていきます。

 

公益社団法人米沢青年会議所
第63代理事長 網代 修 

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