~はじめに~
「二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。一人は泥を見た。一人は星を見た。」イギリスの牧師であり詩人のF・ラングブリッジ「不滅の詩」の一節です。
この文の意味するところは、人は同じ環境に置かれたとしても、なにを見るかによって大きく考え方や行動が変わってくるというものです。
人類が経験したことの無い新種のウィルスによるパンデミックが発生して3年が経とうとしています。いまだ終息の兆しは見えず、命と経済の選択を迫られ続け、人々の心身に重く暗い影響を与え続けています。世の中を見れば暗鬱で禍々しい事件が日々ニュースに流れ、海の向こうでは平和の祈り虚しく国同士の戦争が起こっています。物価の上昇は歯止めがかからず先の見えない漠然とした不安が文字通り蔓延している現在、皆さんは「何」を見ているでしょうか。私は「何」を見るべきなのでしょうか。我々JAYCEEが見つめ、行動していくのは、創設以来不変のテーマである「明るい豊かな社会」の実現のために他ならないのではないでしょうか。
「明るい豊かな社会」を実現するために、米沢青年会議所は1962年の創立以来、多くの先輩方がこの地域とそこに住み暮らす人々のために運動を展開してこられました。変化を続けていく現代にあって、何かを変えていくために自己が変わる勇気を持ちながら、失くしてはいけないものを持ち続ける強さを身に着け、紡がれた歴史と運動に込められた想いをしっかりと受け止め、継承し、次の世代へバトンを繋いでいくことが我々の責任であると考えます。そのために、メンバー一人一人が未知に対して恐れずに挑戦していくことで、地域を牽引するリーダーとして成長することが求められているのです。
~価値を生み出すまちづくり~
豊かなまちには活気が必要であることは誰しもが思うでしょう。しかし、活気とは何から生まれるのでしょうか。勿論そこに住み暮らす人々からであることに疑いの余地はありません。では、人々が活気を高めていくためには何が必要なのでしょうか。それは、一人一人が今、自分が暮らしているまちの価値を認識することです。豊かな自然とその恵みを受けた農作物。積み重ねた歴史に彩られた伝統文化と風土。これらの価値を識り、自らの手でその価値を高めていくという気概こそが我々が地域を巻き込んで醸成させていかなければならないまちづくりの中核であると考えます。継続事業として参加している雪灯篭まつりを始めとした、まちづくりの事業から新たなこのまちの魅力を見出すと共にこのまちの価値を高め、一人一人が活気あるまちを創っていく担い手になる未来に寄与していきます。
~穏やかな心を持ったひとづくり~
明るい豊かな社会。言葉にすれば僅か8文字のこの目標に向けて我々は日々運動を展開しています。しかしながら、具体的にどういった社会なのかを明確に定義できる人は存外少ないのが現状ではないでしょうか。私が想う明るい豊かな社会とは、人々が穏やかな心をもって互いを尊重しあう社会です。人は、自分の価値観と異なる意見を目にした時、ともすれば攻撃的になり、排斥しようとさえしてしまう一面があります。顔の見えないソーシャルメディア等ではその傾向がより顕著に現れ、リテラシーの低下が叫ばれて久しい時代となりました。自分と異なる意見を全て受容することは確かに難しいでしょう。しかしながらその異なる意見を受け止め、必要なら議論し、お互いに歩み寄ることは決して不可能ではないはずです。そういったお互いの「個」を認め合う心を、このまちの未来を担う青少年に身に着けていってもらうことが、我々が果たすべき責任であると考えます。
~進化を続けるミナミハラアートウォーク~
2021年。この年は我々米沢青年会議所にとって創立60周年の節目となった年でした。そんな中、周年事業として産声をあげたのが「ミナミハラアートウォーク」でした。南原という地域と、芸術と、人々を紡ぎ合わせたこの事業は大きな反響をいただくに至り、地域の内外にインパクトを与えました。このインパクトを絶やさず発信していった先に地域活性やまちの価値創造が生まれる未来があるのだと強く信じています。そうであるならば、我々が今やるべきことは、このミナミハラアートウォークを進化させ続けることであると考えます。進化とはなにも規模の拡大や事業期間の延長という意味では決してありません。「進化」とは、変わりゆく時代や環境に合わせてその姿を変容させていくという意味です。このミナミハラアートウォークも、見据えた未来に近づいていけるよう様々な形で事業を展開していきます。
~絆を創る会員交流~
青年会議所に入会して活動をすることによって得られる大きなものの一つが「仲間」であることは間違いないでしょう。それは青年会議所を卒業してからも一生涯通じあえるかけがえのない仲間です。しかしながら、近年の世界を取り巻く状況の影響を受け、活動そのものに制限がかかる事態になり、直接膝を突き合わせて議論する機会が奪われてしまったことによって青年会議所で得られる経験値の多くが削がれてしまっている現状にあります。会員同士の繋がりが希薄化していくということは、組織の屋台骨が揺らいでしまうことに他なりません。もう一度一人一人が何の為に青年会議所に入会したのか、今自分にできることは何なのかを真剣に考え、行動に移していくことが必要なのです。時にはつらい状況になることもあるでしょう。そんな時のために我々がいるのです。ともに助け合い、切磋琢磨を繰り返すことで、人として成長し、会社の、地域のリーダーになっていく。そんな姿を見せることで新たな仲間をつくっていきたいと考えています。
~信頼される組織運営~
米沢青年会議所はその歩みを進める中で様々な場面で関係団体にご協力をいただいてきました。そういった積み重ねが現在の地域社会からの信頼を得ているという現実を常に肝に銘じて活動を続けていかなければなりません。公益社団法人として法令の遵守は勿論、透明性を保った組織運営を内外にお示しすることがこれからも地域に寄り添って運動を展開していく組織としての責任であると考えます。また、我々の活動を積極的に発信していくことで地域の人々に気づきや問題提起を図り、このまちに住み暮らす一人一人がよりまちの未来を考える機会の提供をしていきます。
~結びに~
私は2015年の入会以来、沢山の先輩方や仲間から多くのものをいただいてきました。それは教訓であったり、経験であったり、思い出であったりと本当に様々です。今の私が在るのはこのいただいたものがあるからだと胸を張って言うことができます。同時に、いただいたものは受け継いでいかなければならないとも強く思い、そのために2023年度の理事長の職をお預かりさせていただきます。様々な経験をさせていただいたその裏には、絶えず仲間たちの協力があってこそでした。まちが一人で成り立ちはしないように、組織も一人では成り立たない。このことを常に心に留め、感謝の想いをもって事に臨みます。また、メンバーと共に様々な機会を経験し、共に成長していくことでより結束力を高め、一丸となって明るい豊かな米沢・川西を創造していきます。
公益社団法人米沢青年会議所
第62代理事長 山田 敬之